物流は世界史をどう変えたのか【書評】

物流は世界史をどう変えたのか

ぐっとひきつけられた一文がある。
フェニキア人は世界史上、軽んずることができない民族である。」がそれだ。
なぜ、この一文がわたしの心をとらえたのか?
それは、高校時代に世界史を選択していたわたしの脳裏には、フェニキア人は世界史上、非常に影のうすい存在で、山川の教科書での取りあつかいもフェニキア人を軽んじていた印象(記憶)があったからだ。
あなたのフェニキア人に対する印象も同様であるとおもう。

ローマが地中海を内海とする以前、フェニキア人の活躍は輝かしく、魅力的な商品をさまざまな地域と交易していた。
取り扱っていた商品も興味深い。たとえば、黒檀をご存知だろうか?
現代では、ピアノの鍵盤やチェスの駒などにも使用される高級材である。
当時の人々が黒檀をどのように使用していたのか想像するだけで楽しくなる。
2000年以上も前のことだが、おもったより取りあつかい商品の幅がひろく、豊かな印象を受けておどろいた。

もちろん、この本はフェニキア人についてのみ書かれた本ではない。
誰しも関心をいだく大航海時代や中国の春秋戦国時代なども章立てにかかれている。
いづれも物流面から歴史を俯瞰しているので、歴史好きのひとでも必ずや今まで知らなかったような興味深い発見を得られよう。
例えば、ローマ時代に隆盛をほこったイタリアが、近世以降はイギリスやポルトガル、オランダなどと比較してイマイチ存在感がない印象を持たれたことはないだろうか?
本書を読めば、その謎の手掛かりを得られる。

物流面から世界史をコンパクトに俯瞰した本書はスキマ時間に読むのに最適。
鞄のなかに入れておきたい一冊。トイレに置くのもおすすめだ。
戦争やら革命などの血なまぐさい歴史観からではなく、物流という商売の面から世界史を見ているため、実にさわやかで清涼感にあふれている。
世界史を新鮮な目で見直せること間違いなし。

余談だが、本書は子供のころに読んだ、「○○○のひみつ」シリーズのような構成となっている。
教科書ではないので気に入った章・地域だけをひろい読みするだけで十分に満足できる内容だ。

クイズ

クイズ: 武帝の財政難に解決策を提示した人物は? 三択
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