弁護士が教える分かりやすい「所得税法」の授業


「本書を読んでいるうちに、霧が晴れるように所得税法の全体像がみえて、もっともっと勉強をしたくなった」といわれるような本を目指しています。 -本書より引用
このねらいが見事に実現されている。
著者は税理士ではなく、弁護士。
その距離感が生きたと思う。まわりくどーい、堅苦しい表現がない。
将棋の名人が囲碁の基本手筋を解説するような親しみやすさ。
(ひとは自身の本丸を語るときは力が入りすぎちゃうのかなぁ)
実に読みやすい。折にふれて何度も読み返したくなる。
税務訴訟のさわりにも触れており、幾つかの判例も紹介している。
競馬での収入が一時所得か雑所得か、楽団に所属するヴァイオリニストが自腹で購入した楽器は経費とみとめられないか(「給与所得控除」にふくめられてしまうのか)など。
ふつう、"判例"と聞いただけで眠たくなるだろう。
しかし、この本でとりあげている内容はどれも興味深く何度も味わいたくなる
自分の成長におうじて、より深い味わいをえられるからだ。

「法律」と「通達」とのちがい。これも本書でよく分かる。
そして、おもしろさの源泉がここにあるのだと気づく。
「法律」にはさまざまな解釈があるのだ。
ちょっとコーヒーブレイク。
泥棒や銀行強盗が、犯罪で得た現金を『確定申告書』に記載して税務署に申告する必要があるのか否かについて、「包括的所得概念 (ホウカツテキショトクガイネン)」
の基本的な考えから回答されている。
クスって、笑われました?
「『所得税法』の原則は細かい規定があるようで、体系的にみると、じつは『つながり』(ロジック)があって美しい世界です。」とも。
本書をよむと納得。いづれ、注解所得税法をもとめて図書館の蔵書検索をあさるようになるかもしれない。まるで美術館にかよう気持ちで。
もちろん、実践面でも超お役に立つ本だ。
これまで面倒でしかなかった確定申告がたのしいイベントになる。
絶対おすすめ!