きっぷのルール ハンドブック【書評】

きっぷのルール ハンドブック 増補改訂版 単行本

問題

あなたが新大阪駅前のニッセイ新大阪ビルではたらいている社員だとしよう。
来週、東京の有楽町支店まで出張の予定がある。きっぷ(乗車券付特急券)は社内で用意してもらった。
ところで、あなたは大のラーメン通であり、品川駅で新幹線をおりたあと、有楽町方面とは逆方向の高円寺まで寄りたいとする。天下一品・高円寺店のB定がお目当てなのだ。
さて、あなたは社内で用意してもらったきっぷで在来線の追加料金を支払うことなく高円寺駅までいけるだろうか?

正解は「追加料金を支払うことなく高円寺駅までいける」である。
なぜか?
Yahoo!の路線情報で何度もバシバシ検索する必要はない。視覚的に一発でわかるのだ
すこし解説しよう。

ご存知のとおり、東京一帯は新大阪から数百キロ以上はなれている。
こうした場合、大阪からみて、あたかも東京一帯をひとつの巨大な駅とみたてる
つまり、その大きな駅に有楽町出口や高円寺出口があるとおもえばよい。
出口がちがうだけで、おなじ駅(仮に「東京23区駅」)なわけだがら、当然ながら新大阪ー有楽町と新大阪-高円寺との乗車券運賃はおなじになる。
あなたは品川駅の新幹線・在来線の乗降口で回収されなかったきっぷを手に安心して山手線にのりこみ高円寺駅まで行ける。
高円寺駅で乗り越し清算することはない。以上が理屈だ。

「じゃぁ、その東京一帯って具体的にどんなエリアなの?」への回答は、JRの「特定の都市区内ゾーン」ページに紹介されている。
これを見ると、有楽町駅と高円寺駅とがいづれもエリアにふくまれていることがわかるだろう。
あくまで"特定の"である。
新大阪から秋田まで行くとしても同様の考え方は通用しない。
その場合は地道にしらべるしかない。

本書をよめば、鉄道運賃にかんする幾多の疑問が氷解する。
長期的にみれば、実利もたっぷりえられよう。(要は運賃を安くすませる知恵がアレコレ身につく)。
わたしは、上述の特定都区市内の考えかた以外に、途中下車と有効期限のルールを理解できたことが収穫だった。
知識を組みあわせると以前よりも旅行を計画することが格段にたのしくなったのだ。
あなたもきっとそうなる。

この本は、いわゆる「○○鉄」と呼ばれる方々向けのマニアック本ではない。
「鉄道模型などに凝ったこともないし、仕事で東京・大阪間の新幹線をときどき利用してるくらいかなぁの方々にちょうどフィットする本だ。
どうか安心して手にとって読んでほしい。

著者の円熟期に書かれたと思われる本書には随所に余裕がただよい、親しみやすい内容構成となっている。
2020年の初版で内容も新鮮
鉄道の運賃計算にはゲームのようなおもしろさがある。
知識がふえれば、それを組み合わせることで旅行の計画が何倍にもたのしくなる。
この本は繰りかえし楽しめてボロボロになるまであなたのお気に入り本になる可能性が高い。
ぜひ手にとって読んでいただきたい。

余談

2022年のゴールデンウイーク。姫路に2泊の旅行。
復路は、「JR姫路」駅から「JR河内永和」駅の切符を(姫路駅で)購入した。
姫路 ⇒ 舞子 ⇒ 塩屋 ⇒ 三ノ宮 ⇒ 河内永和、と途中下車の旅を楽しむことが狙いだった。
ところが、わたしの理解不足から目論見が外れてしまう。舞子駅でおりる際に(駅員さんの説明を受けて)あやまりに気づかされた。
なお、「JR姫路」駅から「JR河内永和」駅間の営業キロは、106キロメートル。運賃1,690円。

営業キロに問題はなかったが、"近郊区間"のルールをしっかり理解していなかったことが原因。
なんと、両駅とも「大阪近郊区間」にふくまれていたのだ。大阪っていうくらいだから、姫路は圏外と思い込んでいたのだろうか。
発駅と着駅とがともにおなじ近郊区間にふくまれている場合、両駅のあいだがどれだけはなれていても途中下車はできない。

大阪近郊区間

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