チョコレートの帝国【書評】

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チョコレートの帝国

山っ気のある人ならば、この本を読んでチョコレート産業に打って出ようという野心をいだくだろう。
米粉とチョコレートとアーモンドでおいしいチョコバーをつくれば売れるんじゃないかと夢想している。

もちろん、あなたがチョコレート大好き人間であれば、それだけで本書をたのしめる。

ハーシーズ チョコ

世界最大のチョコレート企業をごぞんじだろうか。ハーシーと答える人が多いかも知れないが、正解はマースである。
スニッカーズなどを生産している会社だ。本書は米国の二大製菓会社、ハーシーとマースを中心としたチョコレート産業の興隆に生涯をかけた人々の伝記である。

また、随所でチョコレートの歴史やその神秘・謎についての記述も織り交ぜており、単なる伝記ものにはとどまらない。

マースの創業者、フランク・マーズの息子であるフォレスト・マーズの言葉に何度も目がくぎづけになったので、いくつかを紹介しよう。
たいしたチョコじゃない、安いチョコだ。でも売れた。なんの宣伝もしないのに」。マーケティング担当者がこれを読んだら目が点になってしまうんじゃなかろうか。
ほかには「弁護士も、会計士も、広告や財務の人間も雇うことはできる ~中略~ だが金儲けをしたかったら、自分で作り方を知らないと駄目だ。他人を金持ちにするために物作りをする人間なんてどこにもいない。物を作るのはみんな自分のためさ」なども心に染み入り考えさせられる。

チョコレートの神秘についても引用したくなる文章はおおい。
「化学的にみて、チョコレートは紛れもなくこの世で完璧な食物です。」や「チョコレートは砂糖、油脂、その他 成分の組み合わせが完璧であり、生物学的、心理的な力は比類がない」という文言を目にすると、チョコレートが想像していた以上に奥の深い食品だということに驚かずにはいられない。

ちょっと脱線。わたし含め、宝くじファンの方へ朗報。本書によれば、宝くじに(高額)当選すると、多幸感に直接関係する物質であるPEA (フェニルエチルアミン)レベルが体内でぐんと上がるらしい。宝くじに高額当選すると不幸になる説とやらがあるが、おそらくそれは間違いなのだろう。PEAレベルのいちじるしい上昇は、会社での昇進や恋に落ちるのと同じくらい大いなる満足をヒトに与えてくれるそうだ。 チョコレートには、PEAが少量ふくまれている。

チョコレートギフト

実ハ、部屋のそうじで断捨離をした際、本書をブックオフで売却してしまった。400ページ超ある本なのでどうしてもかさばってしまい、売却候補となってしまった。
売ってから、もう一度よみ返したい場面が。
それが、マース創業者のフランク・マーズがお菓子作りに適した天候を述べたページ。
たしか、カラっと晴れた日がお菓子作りにベストだったように書かれていたと思うが、、
そこの部分だけもう一度よみ返したい。

この本を知ったのはこちらの番組がきっかけ。著者のジョエル・ブレナーはアメリカ人女性。

本書は400ページちかくあるのだが、おもしろく感じたのは前半の200ページくらいだ。
値段も4,000円を超えて高いのだが、前半200ページは一読の価値あり!

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